実務Q&A 平成26年10月号
『雇入れ時は省略可能? ~健康診断を内定者に実施』
Q.数名を中途採用する際、内定者に健康診断を行ってもらいました。労働者を新しく雇い入れるときには、法律で事業者に健康診断が義務付けられていると聞きましたが、この健康診断を採用直前に行ったもので代用することはできるのでしょうか。
A.項目満たせば代用もできる
労働安全衛生法66条で事業者に実施が義務付けられている健康診断として、常時使用する労働者を雇い入れたときには身長、体重、視力や心電図といった検査を行う必要があります。ただし、雇入れ3ヵ月以内に別途医師の診断を受け、その結果を証明する書面を提出した場合、検査する義務のある項目に相当するものについてはこの限りではありません。
検査が3ヵ月以内に実施され、必要な項目をカバーしていれば、雇入れ時の健康診断の省略も可能になりますが、採用前の健康診断については問題点も指摘されています。厚生労働省のガイドラインなどでは、危険・有害な業務で体質や健康状態を事前に把握する必要があるなど客観的・合理的な必要性がない限り、診断の結果で採用の可否を判断することが就職差別につながるとして、採用選考をするときには健康診断を行うべきではない、と示されています。
『親が契約取り消せる? ~好ましくないアルバイト』
Q.高校生の子供が家族に内緒で2ヵ月ほどアルバイトを続けていることが分かりました。未成年には適切でない仕事に思えるので、辞めさせる方向で考えておりますが、未成年でも親が代わって労働契約を結ぶことはできない、と聞きました。そうすると親は契約を解除することもできないのでしょうか。
A.内容不利なら解除はできる
年少者を保護する観点から、親権者や後見人でも未成年者の代わりに労働契約を締結することは禁止されています(労働基準法58条1項)。しかし、親権者、後見人および行政官庁が、当該未成年者にとって不利な労働契約であると認めた場合は、契約を将来に向かって解除できることも同時に規定されています。
お尋ねのケースもこれに当てはまると考えられますが、不利な内容と認められなくても、未成年者が親など法定代理人の同意を得ないで締結した契約は民法5条の規定により本人または法定代理人の側から取り消し得ると考えられています。
ただし、前記の労働基準法あるいは民法の規定に基づき労働契約が取り消されても、使用者との労働関係が展開していれば、労働基準法の適用を受けることになり(菅野和夫「労働法」)、例えば勤務した分のアルバイト代を親が請求して受け取ることはできません(労働基準法第59条3項)。
提供:労働新聞社