東京都新宿区の社会保険労務士事務所

実務Q&A

2014年11月17日

実務Q&A 平成26年11月号

『休憩を任意に分割? ~一斉付与の適用は除外』

Q.当社は労使協定を締結し、1時間の休憩を一斉に与えなくてよいこととしていますが、用事があると社員の休憩中でも職場に呼び出す管理職が部下からクレームを受けたそうです。「10分休憩した時点で呼び出したら、その後50分休憩させてはいけないのか」と問われましたが、どう答えたらよいでしょうか。

A.自由な利用確保が前提
 一定の事業を除き、休憩時間は一斉付与が原則ですが、これは労働者が休憩時間を自由に利用できることを担保するためとされています。しかし昨今は労務管理の個別化や自立的な働き方の進展などで、自由利用を担保する手段として一斉付与を義務付ける必要が低下しており、一斉付与の適用対象事業でも労使協定による適用除外が可能です。
 ただし、休憩時間は労働者が自由に利用できることが大前提です。労使協定には休憩時間の与え方を定めることが必要なので、休憩中に使用者が自由に呼び出せることにはなりません。また、法律上は労働時間の分割に制限はありませんが(菅野和夫「労働法)、休憩開始から中断までの時間が極端に短いと労働から完全に解放されたとはいえず、残り時間を付与しても必要な長さの休憩時間を与えていないことになり、違反と判断される可能性もあります。


『5人にカウント? ~個人事業所の事業主』

Q.個人事業で従業員が5人以上いる場合には、健康保険の加入義務がありますが、事業主は従業員数にカウントするのでしょうか。

A.数に含めないが任意加入も
 健康保険に加入する義務があるのは、法人の事業所のほか、常時5人以上の従業員が働いている事務所、工場、商店等の個人事業所です。ただし、5人以上でも、サービス業の一部(クリーニング業、飲食店等)や農業、漁業等は、加入義務はないと解されています。
 従業員数の算定ですが、「被保険者となるべき者はもちろん、法3条1項の規定によって被保険者とすることができない者であっても事業所に常時使用される者についてはこれを算入すべき」としています(昭18.4.5保発905号)。
 法人の理事、取締役等であって法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者資格を取得します。
 一方、個人事業主は、従業員数にはカウントしないと解されていますが(日本年金機構)、5人未満でも事業所に使用される者(被保険者となるべき者に限る)の2分の1以上の同意を得て、適用事業とする旨の申請ができます。

提供:労働新聞社

2014年10月8日

実務Q&A 平成26年10月号

『雇入れ時は省略可能? ~健康診断を内定者に実施』

Q.数名を中途採用する際、内定者に健康診断を行ってもらいました。労働者を新しく雇い入れるときには、法律で事業者に健康診断が義務付けられていると聞きましたが、この健康診断を採用直前に行ったもので代用することはできるのでしょうか。

A.項目満たせば代用もできる
 労働安全衛生法66条で事業者に実施が義務付けられている健康診断として、常時使用する労働者を雇い入れたときには身長、体重、視力や心電図といった検査を行う必要があります。ただし、雇入れ3ヵ月以内に別途医師の診断を受け、その結果を証明する書面を提出した場合、検査する義務のある項目に相当するものについてはこの限りではありません。
 検査が3ヵ月以内に実施され、必要な項目をカバーしていれば、雇入れ時の健康診断の省略も可能になりますが、採用前の健康診断については問題点も指摘されています。厚生労働省のガイドラインなどでは、危険・有害な業務で体質や健康状態を事前に把握する必要があるなど客観的・合理的な必要性がない限り、診断の結果で採用の可否を判断することが就職差別につながるとして、採用選考をするときには健康診断を行うべきではない、と示されています。


『親が契約取り消せる? ~好ましくないアルバイト』

Q.高校生の子供が家族に内緒で2ヵ月ほどアルバイトを続けていることが分かりました。未成年には適切でない仕事に思えるので、辞めさせる方向で考えておりますが、未成年でも親が代わって労働契約を結ぶことはできない、と聞きました。そうすると親は契約を解除することもできないのでしょうか。

A.内容不利なら解除はできる
 年少者を保護する観点から、親権者や後見人でも未成年者の代わりに労働契約を締結することは禁止されています(労働基準法58条1項)。しかし、親権者、後見人および行政官庁が、当該未成年者にとって不利な労働契約であると認めた場合は、契約を将来に向かって解除できることも同時に規定されています。
 お尋ねのケースもこれに当てはまると考えられますが、不利な内容と認められなくても、未成年者が親など法定代理人の同意を得ないで締結した契約は民法5条の規定により本人または法定代理人の側から取り消し得ると考えられています。
 ただし、前記の労働基準法あるいは民法の規定に基づき労働契約が取り消されても、使用者との労働関係が展開していれば、労働基準法の適用を受けることになり(菅野和夫「労働法」)、例えば勤務した分のアルバイト代を親が請求して受け取ることはできません(労働基準法第59条3項)。

提供:労働新聞社

2014年9月16日

実務Q&A 平成26年9月号

『130万円で区分か ~扶養以外は被保険者?』

Q.定年後短時間勤務を希望する女性から「年収130万円以上は健康保険の被扶養者になれず被保険者になるのか」と聞かれましたが、どのように説明すればいいのでしょうか。

A.加入要件違い国保に加入も
 60歳以上の者で、退職後継続して再雇用される者については、被保険者資格の得喪を行ったうえで原則として被保険者資格を継続する扱いとなっています。ただし、適用除外となれば、被保険者資格を喪失します。
 年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)であることが求められるのは、「被扶養者」の要件です。さらに、被保険者の年収の年収の50%未満であることが条件です。
 被扶養者になれないからといって、被保険者になるわけではありません。原則として、1.1日(または1週間)の所定労働時間、2.1ヵ月の所定労働日数が一般の正社員等の4分の3以上である場合には被保険者として扱われます。年収180万円以上であっても被保険者の要件を満たさない場合は、国民健康保険に加入することになります。


『時間外労働になるのか ~技術習得の研修や自習』

Q.業務に必要な技術習得のための研修がよく終業時刻を超えてしまいます。居残って勉強する社員もおり、熱心なのはありがたいのですが、際限なく残業が増えてしまわないか心配です。どのように考えるべきなのでしょうか。なお、当社は労働基準法36条に基づく協定(36協定)の締結・届出を行っております。

A.任意参加なら時間外とせず
 使用者が就業時間外に行う教育訓練が時間外労働に当たるかどうかに関して、労働者が参加しない場合に「就業規則上の制裁などの不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」と解されています。使用者が実施する研修でも、参加を労働者の裁量にゆだねていれば労働時間にならず、使用者の指示とは関係なく行う自習も時間外労働としなくて良いことになります。
 ただし最近、技術習得を長時間行った労働者が自殺し、当該自習時間を時間外労働と同視して使用者の安全配慮義務違反を認めた判例がありました(医療法人甲会事件 札幌高判 平25.11.21)。労働者の自由な意思でもそれが業務上の必要に迫られたもので、結果的に過重労働となり心身の健康を損なった場合は労務管理上の責任を問われ得るので、時間外労働でなくとも使用者は業務の実態を把握しておく必要があると考えられます。

提供:労働新聞社

2014年8月9日

実務Q&A 平成26年8月号

『事後証明命じて良いか ~急な介護休暇の申出』

Q.家族を介護している社員が介護休暇を取得する際、当日電話連絡で申し出てくることがよくあります。急な容体の変化などに対応することを考えるとやむを得ないとは思いますが、管理上介護のために休暇を取得した証明を提出してもらうことも検討しています。こうした措置には問題があるでしょうか。

A.過大な負担でなければ可能
 原則年5日まで取得可能な介護休暇の申出は、対象家族が要介護状態にあることと、休暇を取得する日を明らかにして行います(育児・介護休業法第16条の5)。しかし現実には、当日になって休む必要が生じる場合も考えられます。子の看護休暇や介護休暇は、当日に電話など口頭で申し出ることも可能です(平21.12.28雇児発1228第2号)。
 休暇を申し出た労働者に対し、これらの事実を証明できる書類の提出を求めることもできます。ただし前記の通達によると、労働者に過大な負担をかけないもので、提出を拒んだとしても休暇の申出には影響を及ぼさないとされています。また証明する書類として、子の看護休暇では病院の領収書などが例示されていますが、介護休暇で想定されているのは対象家族の要介護状態や同居・扶養の事実についての書類で、「世話を行うこととする事実」については対象外です。


『個室は保険適用外? ~一般病棟の空きなし』

Q.緊急入院した病院で内科的手術後まもない時期に、「症状は回復傾向のためベッドの空きを確保したい」と打診されました。退院には不安があると伝えたところ、個室なら空きがあるといいます。保険は適用されるのでしょうか。

A.患者から希望した場合のみ
 病気やケガをしたときは原則として医療費の3割を負担して必要な治療を受けることができます。個室の入院など被保険者が自ら選択する選定療養は保険外診療ですが、保険診療との併用が認められています。療養の給付に相当する部分は健康保険法86条の保険外併用療養費が支給され、それ以外の部分は自費で支払います。
 選定療養の対象となる個室とは特別療養環境室といわれ、1.病床数は4床以下、2.面積は1人当たり6.4平方メートル以上、3.私物の収納設備を有するなどの条件を満たす病室としています。

提供:労働新聞社

2014年5月13日

実務Q&A 平成26年5月号

『保険料も3%増? ~4月から通勤手当改定』

Q.4月からの消費税率の3%引上げに伴い、公共交通機関の運賃も改定されています。通勤手当が増えればその分社会保険料もアップするのでしょうか。

A.昇給等があれば等級の確認を
 健康保険や厚生年金の保険料は、標準報酬月額をもとに決定します。標準報酬月額は、被保険者の報酬月額に基づき、原則として1年間同じ額を用います。ただし、年の途中に昇給などによって報酬が大幅に変わったときは、標準報酬月額の改定が行われます。
 随時改定を行うのは、固定的賃金の変動月から3ヵ月間の平均と現在の標準報酬月額等級に2等級以上の変動があることなどが条件です。通勤手当も報酬に含まれます。「被保険者報酬月額算定基礎届総括表」などをみる限り、通勤手当も固定的賃金に当たると解されますが、消費税の引上げ分だけで2等級変動することはまずないでしょう。
 4月には定期昇給が重なり本給自体が増えることもあり得ます。通勤手当の引上げはわずかでも、4月の定期昇給や同月に時間外労働が増えたことで、2等級変動すれば随時改定で対応します。その年の定時決定は行いません。


『2割引上げはいつから? ~高齢者の一部負担金』

Q.先日古希を迎えましたが、同年代の仲間うちで病院の窓口負担について話題が出ました。70歳から74歳までの間は負担割合が1割だったところ、もうすぐ2割になるので家計がさらに厳しくなると懸念しています。実際にはどんなスケジュールで引上げられるのでしょうか。

A.既に70歳の人は据置き
 70歳から74歳までの「高齢者の医療の確保に関する法律」を除く医療保険各法の被保険者と被扶養者は、本来の一部負担金が原則2割のところ、平成20年から1割の負担に軽減されていました。この措置が見直されることが昨年決定し、平成26年度予算の成立と同時に、負担金の割合が本則どおり2割に戻ります。
 ただし、この見直しは段階的に行われる予定で、平成26年3月31日以前に70歳に達した人、すなわち誕生日が昭和19年4月1日以前の人については1割のまま据え置かれることになっています。結局、これまで1割負担だった人が4月から2割になるわけではないことになります。
 昭和19年4月2日以降に誕生日のある人は、70歳に到達した翌月から負担が3割から2割になりますが、一部「現役並み所得者」とみなされる人については70歳以降も3割負担となります。

提供:労働新聞社

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