実務Q&A 平成26年2月号
『帰途のセクハラは通勤災害? ~飲食店で打ち合わせ中「就業場所」といえるか』
Q.女性従業員から「上司から事務打ち合わせという名目で飲食店に誘われ、セクハラを受けた」と相談がありました。セクハラが問題化したのは、当日の帰途、女性従業員が駅で転倒して負傷し、詳しい事情を問い質したからです。仮に社内でセクハラと認定した場合、通勤災害の請求をすべきなのでしょうか。
A.職場の定義異なる
通勤経路をたどっている最中に事故に遭遇しても、通勤災害と認められるとは限りません。対象となるのは、就業に関する移動中の事故です。「就業に関する」とは、「移動行為が業務に就くため、または業務を終えたことにより行われるものであることを必要とする趣旨である」と解説されています。
打ち合わせの名目で上司・部下らが飲食店に立ち寄るのは日常茶飯事のことです。一般には業務には含まれず、飲食店が就業の場所とは認められません。お尋ねのケースでは、業務終了後の事務打ち合わせについて、労働時間(賃金の支払対象)とする取扱いもしていないはずです。
住居と就業の場所の間の往復に該当しなければ、そもそも通勤災害の定義に該当しません。
社内ではセクハラとみなして処分し、本人が裁判で争い、最終的にセクハラと認定されたとします。セクハラは、すなわち業務上の出来事ですから、飲食店が「就業の場所」となり、通勤災害と主張できるのでしょうか。
セクハラとは「職場において行われる性的な言動」を指します。ここでいう職場とは「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、取引先と打ち合わせをするための飲食店等であっても、業務を遂行する場所であればこれに該当する」(厚生労働省「セクハラ指針」平18.10.11)と定義されています。
解釈例規では「勤務時間外の宴会等であっても、事実上職務の延長と考えられるものは『職場』に該当するが、職務との関連性等を考慮して個別に判断を行う」としています。
セクハラでいう「職場」と通勤災害上の「就業の場所」は別々に定義されていて、自動的に通勤災害の保護対象になるとは限りません。
『すぐ辞める社員多い ~派遣先がやるべきことは』
Q.当社では複数の派遣会社から社員の派遣を受けていますが、ある会社の社員が入社数日で辞めてしまうという事態が続いています。派遣社員にも制服棟を支給するため、早期に退職されると経費もムダになる等いろいろ困ります。派遣先と派遣元でそれぞれどう対処すべきなのでしょうか。
A.連携をとって問題解決
派遣労働者の労働条件は、派遣元の就業規則や労働契約で決定されるというのが基本的な考え方です。制服代等の扱いについても派遣元が就業規則に定めますので、弁償を求めるにしても、派遣元が就業規則等に基づき給与等から控除した代金を派遣先に支払うといった段階を踏むことになります。
派遣労働者の退職が相次ぐ背景には、派遣元が交付する就業条件明示書と派遣先の実際の就業条件との乖離、派遣先の職場環境のお問題等が考えられます。派遣先にも派遣元同様に苦情の申し出を受け付ける担当者を置き、連携して問題解決に当たることを求める「派遣先が講ずべき措置に関する指針(平11.11.17労働省告示)」があります。派遣元とよく話し合い、必要なら明示書の修正を求め、同時に貴社の職場が派遣労働者にとって不当に働きにくくなっていないか確認して、根本的な解決を図る必要があるでしょう。
提供:労働新聞社